オペラとオペレッタ

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制作者：国本静三　

わが指針

オペラoperaとオペレッタoperetta

＜オペラopera＞

　オペラは日本語では歌劇とも訳されるが、あまり適切な訳語とは思えない。なぜならばオペラopera^{ラテン語→伊語}はもっと広い意味を持ち、元来労働とか仕事を意味し、芸術作品、音楽作品とか著作品を意味する。語源的にはオプスopus^ラテン語である。オプスopus^１）は音楽の作品番号を示すのに用いられていることは衆知の通りである（Op.と略記され、一例をあげればベートーヴェン「荘厳ミサ曲ニ長調Op.123」）。

　しかし、オペラ誕生時の初めからオペラとはいわれてはいなかった。当初はドランマ･イン･ムジカdramma in musica（音楽による劇）とか、メロドランマmelodramma（メロディによる劇）と呼ばれていた。オペラoperaという語が実際に用いられたのは1639年ヴェネツィアで、カヴァッリ「テティとペレオの結婚」をオペラ･シェニカopera scenicaと言い、その後オペラ･イン･ムジカopera in musicaというようになった。そして末尾部分が省略されてオペラoperaが流布し、現在に至っている。

［注］

^１）　作品・作業を意味するラテン語のopusの複数形がoperaである。オペラは多数の管弦楽曲、声楽曲によって構成されているから、複数形は妥当であろう。

＜オペレッタoperetta＞

　オペレッタの先陣は18世紀後半から現れた。独語によるジングシュピールSingspiel^独語と18世紀後期から出現したフランス･オペラの一様式でフランス語によるオペラ･コミックopera comique^仏語である。ジングシュピールはオペラ･コミックと似ている。モーツァルト「バスティアンとバスティエンヌ」、「後宮からの誘拐」や「魔笛」はジングシュピールである。後のベートーヴェン「フィデリオ」、ヴェーバー「魔弾の射手」は独語であることを除けばオペラ･コミックともいえるものである。オペラ･コミックはより普遍的なコンセプトして長く残っていく。

　オペラ･コミックはイタリア･オペラのオペラ･ブッファの影響から生れ、レティタティーヴォ･セッコを無くし台詞に替えたものである。当初はフランス語による軽妙な内容のものが多かった。だが内容（ex.悲劇･喜劇、恋愛劇）や言語に関わりなく、形の面からオペラ･コミックを捉えられていくようになる。オペラ･コミックであることの決め手は、レチタティーヴォが無く台詞が含まれるかどうかで決められる。ロマン派時代のフランス･オペラであるビゼー「カルメン」、マスネ「マノン」などもオペラ･コミックである。オペラ･コミックの対概念は、合唱やバレーを多用したグランド･オペラであろう。

　オペレッタoperetta^伊語はドイツ語圏で19世紀後半から現れ、形としてはジングシュピールやオペラ･コミックと同じである。ただオペレッタの劇内容は、軽妙な喜劇や軽い恋愛劇である。日本語で軽歌劇とも訳されることがある。オペレッタはドイツ語圏中心に、すなわちドイツやオーストリア支配下の東ヨーロッパにおいて盛んになり、他の言語によっても作られもした。レハールは喜劇とは異なる独特なオペレッタを確立していく。

<参考>　――オペラに関する各種コンセプト――

オペラ･セーリアopera seria、オペラ･ブッファopera buffa、ジングシュピールsingspiel、オペラ･コミックopera comique、オペレッタoperetta　

番号オペラnumber opera^英語…番号を付けた複数の楽曲で構成された伝統的なイタリア･オペラの構成法。レチタティーヴォやアリアもその楽曲の一つである。

通作オペラthroughcomposed opera^英語…ヴァーグナーは、番号オペラを音楽的な一体性や連続性を欠くものとして否定し、無限旋律を用いた楽劇を創り出した。オペラの一幕を、交響曲の一つの楽章のような有機的構成を持たせた。

★オペラの誕生と発展について：① ② ③ ④
★バロック･オペラ略史　★バロックフランス･オペラ略史　★バロックドイツオペラ略史
★古典派フランス･オペラ略史　★古典派ドイツオペラ略史
★ロマン派イタリア･オペラ略史　★ロマン派フランス･オペラ略史

★　ロマン派の作品