難局に聴く音楽
現在われわれは、コロナと戦状態争――ロシのウクライナ侵攻、ミャンマーの軍と人民の衝突――による苦しい難局に生きている。こうした時
バッハ1724年作曲の
「ヨハネ受難曲BWV245」を聴き、バッハの世界に入り込むのも意味がある。われわれはあまりも騒がしく、錯綜する嵐の中にいる。こういう時こそ沈静し、イエスの十字架の世界に身を置くのも功があるかもしれない。キリスト教徒の筆者にとってはより直接的意義がある。
さて、この受難曲は
ヨハネ福音書18章と19章、つまりキリストが捕らえられ十字架の受難までが描かれる。バッハが所属していた
ルター派教会のミサと礼拝式は、当時限りなくカトリックに近い要素を含んでいた。現在も月に１度ほど行われるミサはルターの時代のカトリック教会を映し出している。現時点のカトリック教会典礼からみれば大きな相違点がある。カトリックは、かってカトリック修道司祭であったルター自身の信仰のルーツであった。アウグスト会修道院で過ごした修道生活は、ルターの根幹ともなった。古来、西洋世界のキリスト教全教派の根源的なカトリック教会の
聖週間の
聖金曜日――
主の受難（ミサが執り行われない年間通して唯一の日）には、今も
<ヨハネによる福音書18・1～19・42>が、３人朗読者と会衆が加わって壮大に朗読される。これを音楽化したのが
「ヨハネ受難曲BWV245」である。
今現在、われわれはコロナやロシアのウクライナ侵攻と大きな問題を抱えている。すべてをご存じの神はいかにこれらをどうお考えか。ドライな表現をすれば、この目前のすべての事柄を、つまり三位一体の御子は2020年前に見て取り、十字架に向かわれた。そしてイエスは敵をも愛せ祈れ
（マタイ５・45）、と教えられた。人を裁くなとも教えられた。ではどうすればいいのか？ キリストの十字架の道を最もくわしく伝える
ヨハネによる福音書18章～19章に一つの原点を求め、イエスの教え――
敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。（マタイ５・44）――を身につけたいと思う。キリストはこのことを行われたのである。さらに実践なさったのが、――
友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。（ヨハネ15・13）――。ちなみにイエスにとってすべての人間が友であり、この神の救いの業を十字架の死で示された。
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