実話、オペラ「トスカ」
プッチーニ（1858-1924）の
オペラ「トスカ」（イタリア語）の原作は、フランスの劇作家サルドゥー（1831-1908）の５幕の劇作品、1800年６月17日午後から18日早朝に起こった実話を基にしている。プッチーニは実際この劇作をミラノで観る。有名なフランスの大女優サラ・ベルナール主演によるフランス語の原作上演だった。作曲には紆余曲折があったが、1898年１月から1899年９月末にかけて作曲された。
「トスカ」の舞台はローマ。共和制が崩壊して、王制での恐怖政治下にあった。秘密警察長官スカルピアは反王制派の共和主義者を次々と捕え、投獄していた。その一人だったアンジェロッティが脱獄したところから物語が始まる。
画家カヴァドッシは、サン・タンジェロ城から脱獄した友人、アンジェロッティの逃亡を手助けした。そのためカヴァドッシは秘密警察長官スカルピに捕らえられ、死刑宣告を受けた。彼の恋人オペラ歌手トスカは、彼を助けようとするが、かねてよりトスカに興味があったスカルピは彼女に迫り、関係を求めた。カヴァドッシと逃亡するための通行手形を条件に同意。スカルピのすきを見て、トスカはスカルピをナイフで刺し、スカルピの机上にあった通行手形を取り去る。牢獄のサン・タンジェロ城屋上での銃殺処刑は見せかけのはずだったのに、そうはいかなかった。この時、秘密警察長官スカルピのトスカによる刺殺が知らされ、カヴァドッジの死を目にしたトスカは、サン・タンジェロ城屋上から身を投げる
。
「トスカ」は実話が題材であるが、美しく鋭気あふれる音楽――甘美な旋律と劇的な管弦楽書法によるその劇的表現は、観る者を惹きつけてやまない。この魅力あふれる音楽表現は、プッチーニが意図した
ヴェリスモ・オペラの理念や政治的側面と無縁、と筆者は考える。
このＤＶＤのタイトルロールは、現代最高のプッチーニ歌手と称されるクリスティーネ・オボライス。カヴァラドッジは、チリ生まれのアメリカ育ちの若きテノールのジョナサン・テテルマンで、注目を浴びる情熱的なテノール歌手である。
プッチーニ ／20世紀音楽の様相 20世紀年表／ プッチーニ
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