遺産的響きで聖誕を！

ＣＤ -５０３６（女子パウロ会）

「ノートルダム寺院のクリスマス」

ジュアン・ルヴェール指揮
ピエール・コシュロ（org）

ノートルダム大聖堂聖歌隊
コントルポワン合唱団
ガブリエル・マッソン金管合奏団

①グルーバー：聖夜
②大聖堂内のミサ開祭の鐘
③グレゴリオ聖歌：今日キリストが生まれた
④オルガン即興演奏
⑤聖歌：神の子は生まれた
⑥オルガン即興演奏
⑦プジャック：アヴェ・マリア
⑧オルガン即興演奏
⑨聖歌：アデステ・フィデーレス
⑩オルガン即興演奏

⑪パレストリーナ：アルマ・レデンプトリス
⑫聖歌：あれ野のはてに
⑬オルガン即興演奏
⑭プレストリウス：今、救い主は生まれた
⑮オルガン即興演奏
⑯ダカン：聖誕を歌え
⑰グレゴリオ聖歌：みどり子が生まれた
⑱オルガン即興演奏
⑲モンテヴェルディ：主をほめたたえよ
⑳オルガン即興演奏：「救い主を来て下さい」による

録音：1973年パリ､ノートルダム大聖堂

遺産的響きで聖誕を！

　2019年４月15日から16日にパリ、ノートルダム大聖堂の火災でが起き、尖塔が崩落し、屋根が完全に焼け落ちてしまった。火災の原因は未だに不明ですが、有力説は多数の鐘を鳴らしていた電動装置による漏電といわれている。大聖堂の復興は困難を極めているらしい、とパリの友人から聞きました。

　火災前のノートルダム大聖堂に響くこの1973年の録音は、まさに遺産的記録といえる。大聖堂の復元を待ちに待っているものの、それまでにあった大聖堂の響きが復活するか否かに気を揉んでいる。パリオリンピック（2024年）までには完成といわれているが、急がないで欲しい、適正なよい復元をと願うばかり。大オルガンは無事といわれているが、大聖堂が修復されても元の響きが得られるのか、などと懸念材料は多い。

　パリ、ノートルダム大聖堂は1163年から約200年かけて14世紀に完成されたフランス屈指の名ゴシック建築の一つ。歴史的な石造り建築による１分は越える残響音は、自然の倍音を豊かにもたらす純粋ですばらしい響きで、この音響によって多くの名曲を生み出した。コンクリート建築によるうなり音やすべての音を不明瞭にしてしまう残響や、またスピーカー、音響ミキサーなどによる音響装置による音とは根本的に違うものである。

　ひょっとして二度と戻らない響きをこのディスクは有していることになるかもしれない。どうか多くの願いを込めて筆者もこの録音を聴き直したいと思う。