聖母の被昇天を祝う

ＣＤ　ＰＲＯＣ1295-6（２枚組）

ビーバー　「ロザリオ=ソナタ集」

ムジカ・アンティクワ･ケルン
ラインハルト･ゲーベル（vn）
フェーベ･カライ（vc）=①～③　コンラート･ユンクヘーネル（lute）　アンドレアス･シュベリング（cemb、org）

喜びの神秘		関連した聖書の箇所
①	ソナタ第１番「お告げ」	ルカ１・26-38
②	ソナタ第２番「エリザベト訪問」	ルカ１・39-47
③	ソナタ第３番「降誕」	ルカ２・１-７
④	ソナタ第４番「イエスの奉献」	ルカ２・21-24
⑤	ソナタ第５番「神殿のイエス」	ルカ２・41-50
苦しみの神秘
⑥	ソナタ第６番「ゲッセマネ」	ルカ22・39-45
⑦	ソナタ第７番「むち打ち」	ヨハネ18・13-14
⑧	ソナタ第８番「いばらの冠」	ヨハネ18・13-14
⑨	ソナタ第９番「十字架を担う」	マルコ15・20-27
⑩	ソナタ第10番「十字架上の死去」	マルコ15・29-32
栄えの神秘
⑪	ソナタ第11番「復活」	マルコ16・１-７
⑫	ソナタ第12番「昇天」	使徒言行録１・６-11
⑬	ソナタ第13番「聖霊降臨」	使徒言行録２・１-４、32-41
⑭	ソナタ第14番「聖母の被昇天」	（ルカ１・48）参考
⑮	ソナタ第15番「天の元后マリア」	（ヨハネの黙示録12・１）参考
★
⑯	パッサカリア　ト短調

録音：1990年１月　　発売：2013/6/7

★　曲目表記は筆者の考えに基づき変更有り（上記のＣＤ自体とは異なる）

聖母の被昇天を祝う

　「53声部のミサ曲」で有名なハインリヒ･イグナツ･フランツ･フォン･ビーバーHeinrich Ignaz Franz von Biber^{オーストリア}(1644-1704)の「ロザリオ=ソナタ集Rosenkranz-Sonaten」をご存じでしょうか。北ボヘミア出身のビーバーは、ザルツブルク宮廷にヴァイオリン奏者として仕え、1684年には宮廷楽長となった。独特の個性をもつヴァイオリン･ソナタである。ドイツ的でもなく、ソナタの誕生国イタリアのソナタとも異なる様式をもっている。感性豊かで描写性を有する音楽となっている。

　1674年頃の作品であるこの曲集は、カトリック教会信徒が祈るロザリオ（数珠の一種）を用いた「ロザリオの祈り」に沿って曲が組み立てられている。それは上記に示した①～⑮の15曲で、５曲ずつがロザリオの一環の祈りとなる。大きくは３つの組に分けられている。「喜びの神秘」、「苦しみの神秘」、「栄えの神秘」である。この各神秘を瞑想しながら規定の祈りを唱えていくのである。十字架=信徒信条、次の珠=主の祈り、３つの珠=それぞれにアヴェ･マリアの祈り、次の珠=栄唱、そして主の祈り＋「アヴェマリアの祈り」ｘ10＋「栄唱」の組み合わせを５回唱えていく。これに即して曲は進む。上記の曲目表に関連した聖書箇所を参考までに付けておく。全体はイエスの重要な神秘（玄義）を想いながら、主イエス=神に対して、聖母マリアによってとりなしを願い、祈るのである。

　聖マリアは汚れない（無原罪の）人間として生まれ、そして必然的な帰結として天に上げられた（被昇天）と正教会＆カトリック教会は伝承し、教えている。毎年８月15日は「聖母の被昇天」の祭日として祝われている。1950年ピオ12世によって宣言された。
　「カトリック教会のカテキズム」（ラテン語版初版1992年、改訂版1997年発刊。日本語訳2002年7/31カトリック中央協議会発行）は、“聖マリアは、地上の生涯を終えると、肉体と霊魂ともども天の栄光に引き上げられました。そこで御子の復活の栄光にあずかり、神秘体の全肢体の復活を先取りしています。”（p295の<974項>）と記している。この教義は理性や知性のみではとらえられないもので、信仰の次元によってのみ理解可能となる、と筆者は享受している。