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神秘劇オペラ！


　レスピーギRespighi^イタリア（1879-1936）はボローニャ出身の作曲家、音楽学者、指揮者。1908年までヴァイオリン奏者やヴィオラ奏者として活動し、その後作曲に転向した。その大きな理由は、２度にわたって（1900-01年と1902-03年）ロシア帝国劇場管弦楽団の首席ヴィオラ奏者としてペテルブルクに赴任し、イタリア・オペラの上演にも携わった。そして有名なリムスキー=コルサコフRimsky-Korsakov^ロシア（1844-1908）と出逢い、５ヶ月におよぶ指導を受けた。そしてボローニャでは作曲の２つめの学位を受け、ベルリンにも行き広く目を広げた。

　遠く日本にいるわれわれには見る機会が無いレスピーギのオペラは、10作にも及ぶ。神秘的題材もあって、たいへん味わい深いものが多い。オペラ「エジプトのマリアMaria egiziaca」は、台本はクラウディオ・グヮスタッラで初演は1932年、ヴェネツィアとニューヨークだった。

　さて、このオペラの題材となっている人物は聖人とされる<エジプトのマリア>である。現在カトリック教会では殆ど周知されていない名である。60年前（昭和35年）に発行された「キリスト教百科事典」（エンデルレ書店刊）によれば次の通りである。エジプトに生まれたマリアは女優となり、アレキサンドリアで娼婦となる。後に回心し、ヨルダンのかなたの荒野に退き、激しい悔い改めの生活をおくった。500年頃没し、聖シリアクスの二人の弟子によって同所で亡骸が発見され、聖人に列せられた。カトリック教会の記念日はかっては４月２日であった。聖シリアクスも現在周知されていないが、十字架の発掘発見者でシリアクスという名で知られ、聖人となったとされる。

「エジプトのマリア」 ホセ・デ・リベーラ（1591-91） バロック時代のスペインの画家 1691年制作

　オペラのあらすじは次のよう。エジプトのアレキサンドリアからエルサレムに向かう船に乗って娼婦マリアは、船乗り相手に身を売っていた。エルサレムに着いたマリアは、高徳の巡礼者と出会って回心する。そして激しい苦行に励み、自己聖化に懸命につとめ、生涯を閉じ、ついに聖人に列せられる、という過程が淡々と描かれている。

　レスピーギの多様な作曲書法の駆使は驚きである。バロック、古典派に見られたチェンバロと共に歌唱される朗唱様式と壮大なとレスピーギ流管弦楽法による響きの対比による表現がよい効果を生み出し、レスピーギ世界の全開となっている。いわゆる日常的でない題材の神秘的なオペラを味わって享受下さい。

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レスピーギ　／20世紀音楽の諸相　20世紀年表／　
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